サステナブルの現場から #06|スイス・Biogas Zürichに見る再生可能エネルギーの仕組み

2024年10月に6泊7日で行われた「サステナブル・トレイル2024」の視察報告の第6弾です。
チューリッヒ(スイス)で現地集合したSJS代表の滝川+15名の参加者で、スイス・オーストリア・ドイツにまたがるボーデン湖の周辺に沿って、持続可能な取り組みを行う企業や自治体、教育機関などを視察しました。

サステナブル・トレイル2024 全行程
訪問先
自己手配により日本出国チューリッヒ空港にお迎え
#01 協同組合式のエコ・シェア集合住宅Vogelsang
#02 オーガニック・ZEBワイナリーLenz
オーガニック・スーパー訪問夕食会
#03 オーガニック・ビール醸造所Locher
  美しいアッペンツェルの旧市街で各自散策後、昼食〜オーストリアへ
#04 持続可能な教育を実践するルステナウ村の小中一貫公立学校Schule am See/ビオホテルでの夕食
#05 ☆☆☆☆ビオホテル・シュヴァ―ネン
#06 自治体Langenegg/ビオホテルでの夕食
#07 ユーバーリンゲン市(ドイツ)のオーガニックストア・レストラン
#08 ドイツ洗剤メーカー Sonett
#09 ドイツスポーツ用品メーカー Vaude
#10 スイスBiogas Zurich
・夕食会
ホテルチェックアウト〜チューリッヒ空港から帰国

視察最終日には、再びチューリッへ。さまざまな取り組みを視察した締めくくりとして、チューリッヒ市とその周辺地域から発生する有機廃棄物をリサイクルする設備 Biogas Zurich(以下、バイオガス・チューリッヒ)を訪問しました。

2011年にチューリッヒ市内に直接建設されたプラントで、ここでは有機廃棄物――具体的には生ゴミと木質廃棄物(剪定枝など)――が回収され、肥料製品とバイオガスへとリサイクルされています。

この施設に集められた有機廃棄物は、まず「生ごみ」と「木質廃棄物」に分けられ、細かく砕かれます。
その後、異物を取り除いたうえで、温度が55℃に保たれた発酵槽へと送り込まれ、発酵がスタートします。

発酵槽の中では、攪拌機が絶えず材料を混ぜながら発酵を促進。
およそ14日かけて槽の中をゆっくりと移動する間に、廃棄物は次の2つに自然と分かれていきます。
・バイオガス(気体成分)
・発酵廃棄物(固形・液状)

バイオガスはパイプで処理プラントに運ばれ、電気や熱として再利用されます。
残った発酵廃棄物はさらに固体と液体に分けられ、液体は液肥に、固体は堆肥の原料として、農地などに再び活かされていきます。

生成されたバイオガスは、隣接する下水処理プラントで発生するガスと一緒に処理・精製されます。
もともとバイオガスは、メタンが約60%、二酸化炭素が約40%を占めていますが、この施設では、メタンの含有率を98%以上にまで高め、天然ガスと同じレベルの品質で供給しています。

印象的だったのは、この工程で発生する二酸化炭素の一部が、アイスランドへと輸送されているという話です。
廃棄物処理と気候変動への対策が、国を越えてつながっていることに、この施設の存在意義がよく表れているように感じました。

ふだんの生活では、廃棄物処理場を訪れる機会はほとんどありません。
今回見学した施設でも、確かに強い臭いが感じられました。
とはいえ、ここで扱われているのは生ごみや木質廃棄物といった、発酵が進みやすい、いわば自然に近い性質を持つ有機物です。

一方で、私たちの暮らしは多くの化学物質に囲まれています。
プラスチックなどの石油由来の素材が分解されにくいことは広く知られていますが、実は食品に含まれる保存料も腐敗を防ぐという性質上、自然界での分解を妨げてしまうことがあります。

自然の力で分解・循環できる以上の負荷を、私たちは日々使い続けています。
だからといって、現代の生活そのものを否定するのではなく、選ぶこと、知ること、考え続けること、などを通じて、今後も人の暮らしが持続可能となるように取り組んで行きたいと考えています。

(写真・文/大久保宜子)

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