サステナブルの現場から #05|ドイツ・エコ洗剤トップメーカー Sonett の持続可能な取り組み

2024年10月に6泊7日で行われた「サステナブル・トレイル2024」の視察報告の第5弾です。
チューリッヒ(スイス)で現地集合したSJS代表の滝川+15名の参加者で、スイス・オーストリア・ドイツにまたがるボーデン湖の周辺に沿って、持続可能な取り組みを行う企業や自治体、教育機関などを視察しました。

サステナブル・トレイル2024 全行程
訪問先
自己手配により日本出国チューリッヒ空港にお迎え
#01 協同組合式のエコ・シェア集合住宅Vogelsang
#02 オーガニック・ZEBワイナリーLenz
オーガニック・スーパー訪問夕食会
#03 オーガニック・ビール醸造所Locher
  美しいアッペンツェルの旧市街で各自散策後、昼食〜オーストリアへ
#04 持続可能な教育を実践するルステナウ村の小中一貫公立学校Schule am See/ビオホテルでの夕食
#05 ☆☆☆☆ビオホテル・シュヴァ―ネン
#06 自治体Langenegg/ビオホテルでの夕食
#07 ユーバーリンゲン市(ドイツ)のオーガニックストア・レストラン
#08 ドイツ洗剤メーカー Sonett
#09 ドイツスポーツ用品メーカー Vaude
#10 スイスBiogas Zurich
・夕食会
ホテルチェックアウト〜チューリッヒ空港から帰国

視察4日目には、3ヵ国目のドイツへ。オーガニックレストラン&ショップ Naturata にて昼食と買い物を楽しんだ後、エコ洗剤メーカーでドイツ・トップシェアを誇る、1977年創業のSonett(以下、ソネット)を訪問しました。

今回訪問したのは、1994年から使われている社屋です。ルドルフ・シュタイナーに影響を受けた同社内では、随所にその思想が感じられました。

*ルドルフ・シュタイナー:オーストリアの哲学者、教育者、神秘主義者。人智学の創始者として知られ、教育・農業・医学・芸術など多岐にわたる分野に影響を与える。物質主義に偏りすぎた今の文明の在り方には限界があると考え、物質世界と精神世界との調和が必要であると説いた。

ソネットの歩み

1960年代の末、ドイツでも合成洗剤が主流となっており、それは当然ながら自然界では分解されないものでした。洗濯後の排水などの生活用水が川に流れ込み、河川や湖を汚染するだけでなく、上水として使われる地下水までも汚染が進んでしまった現状がありました。それらの状況を鑑み、100%自然分解する洗剤を開発したのが今回視察したソネットです。

同社では当初、粉末洗剤にこだわって開発が進められていましたが、時代と共に液体洗剤が求められるようになりました。洗濯時には普段使いの洗剤とシミなど強い汚れがある際に使用する洗剤を分けるなど、過剰な(無駄な)洗剤が使われないよう使用方法も改善されつつ、現在に至ります。

ソネットの洗剤には、遺伝子組み換え作物、酵素、石油化学由来の原料や保存料は一切使われていません。使用オイルについても、ヒマワリ油、オリーブオイル、ココナッツオイルなど、有機農業からの原材料を使用しており、視察では製造方法の一部を見学させてもらいました。

製法へのこだわり

工場見学を進めるうち、小部屋の一室に入ると不思議な形の容器が。
「オロイッド調合器」という容器内に7種の原料を加え、その容器を15分転がしては1日寝かせる、という作業を7日間。そうやって原料を熟成させることで香りも変化し、その一部が基となり製剤を作っているとのこと。また、理科室にありそうな卵型の連なったガラス容器に水を流して乱流をおこし、その水を製品に使っている過程などの説明も受けました。

一見、不思議な儀式のようにも見えましたが、オロイッド調合器ではおそらく好気と嫌気の状態をつくることで微生物製剤を製造し、「卵型のガラス容器で作った酸素のたっぷり溶け込んだ水で、微生物製剤の保存を促しているのかしら」と妄想も入りながら興味深く聞き入ってしまいました。

また、工場内で一部使う機械については、人間のリズムに合わせた速さにしている、との説明も。こちらも一瞬「なぜ?」と思いましたが、「人間の手により作ることができる以上の物質をつくることで自然界に過剰に負荷を与えることを避ける」ということかしら、などなどソネットの思想の奥にある意味を考え感じながらの見学は初めての体験でした。

その他にも、わかりやすいものとして、洗剤に使われる容器はリサイクルされています。洗剤がなくなれば同じ容器に洗剤のみ注入することや、容器自体を廃棄する際は空きボトルを回収し、ペレット状にし洗浄して再び新しい容器の原料として再利用しているとのことでした。

独特な製造過程や表現方法に触れることのできたこちらの視察では、シュタイナー思想の一端を垣間見ることができた貴重な機会となりました。
ソネットの洗剤は香りもとても心地よく、日本にも輸入されていますのでご興味のある方は試してみてはいかがでしょうか。

(写真・文/大久保宜子)

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